一方では論理的な理智的な小説を書きたいという欲求また一方では不合理、不確かさ、複雑さをもった生き
【名言名句】
一方では論理的な
理智的な小説を書きたいという欲求また一方では不合理、不確かさ、複雑さをもった生きた人物を描こうという欲求--われわれはその二つの欲求の戦場であるがいい……
【解説】
文学者というものは、必ずしも事実を書くものではない。自分が望み求めるもの、それは理想像であることもあるだろうし、挫折、屈折した人物像であるかもしれない。一生を闘病生活で送ったような堀辰雄は、人間についての深く沈潜した思考に生きた。彼の心の中では、調和しえない二つの欲求がせめぎ合い、そのあやういバランスから作品が生み出されていたのだろう。
【作者】堀 辰雄
【生没年】1904~53
【職業】作家
【出典】『小説のことなど』
【参考】遠藤周作は、「堀さんは非常な勉強家だった。追分に疎開されたあとも、真冬でもきちんと机にむかってマラルメを読んでおられる姿を見たこともあるし、発熱の日は体を横たえたまま書見器を使って仏蘭西語の原書を見ておられたのも覚えている」といっている。
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450618 |