貧者の一つの幸福は世が彼の交際を要求しない事である
【名言名句】
貧者の一つの幸福
は世が彼の交際を要求しない事である
【解説】
いつの時代も、どこの国でも、貧乏人はあまり相手にされない。弱者として扱われ、わずらわしい社会的関係や、人間関係から疎外されているのは、かえって幸福で、自由でもある、というのは、あながち、ひがみや皮肉ではあるまい。
内村はまた、富者とは神に多くを託された者、貧者は神に少なく託された者という。すべては神のものであり、おのれのものなど一つもないという点では富者も貧者も同じことだと。ただ、責任の軽いぶんだけ貧者のほうがよいともいう。富者には自分に託されたものを正しく用いる責任があるというのである。
【作者】内村鑑三
【生没年】1861~1930
【職業】宗教家
【出典】『所感十年』
【参考】内村鑑三は、「少年よ、大志を抱け」の言葉で有名なクラーク博士らの感化を受けてキリスト教徒となった札幌農学校の生徒の一人であった。しかし、アメリカに留学した彼は当地の拝金主義や人種差別の横行する社会に幻滅したという。後年は特定の教派・神学に頼らず、聖書のみに基づく「無教会主義」を唱えた。
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450061 |