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東洋医学のしくみ1章 東洋医学の概略と必要性 >

ミクロの医学とマクロの医学
【みくろのいがくとまくろのいがく】

◆現代医学はミクロを追求する
 現代医学の進歩の過程をたどってみると、研究やそれに基づく治療の新しい扉は細分化によって開かれてきたといってもいいでしょう。最初は医師の肉眼だけに頼っていたものが、拡大鏡や顕微鏡が使われるようになり、やがてエックス線診断装置やMRI、各種内視鏡などが発明され、より深くより細かく人体の構造に踏み込んでいくことで、現代医学は発展してきました。
 もう40年以上も前に大ヒットした映画に「ミクロの決死圏」という作品があります。人間をミクロ単位に縮小し、病気治療のために体内に送り込むというSFで、さすがに半世紀近くたった今もそういう技術は実現していません。しかし、治療機能を持つミクロ単位のロボットの実現は、すぐそこに迫っています。現代医学は文字通りの意味で「ミクロの医学」なのです。

◆人体をマクロでとらえる東洋医学
 これに対して東洋医学は「マクロの医学」といわれます。人体を一つの有機体とみなし、つねに全体のバランスを視野に入れ病気を考えていくものだからです。
 たとえば、病気を病巣の部分だけでとらえようとせずに全身の各部から診断したり、病巣とは一見無関係見える部位からアプローチして治療したりします。また、自然との一体感を重視するというのも大きな特徴で、季節や住環境の変化、食物の変化などが人体にどんな影響を及ぼすかについての研究も、活発に行われています。
 現代医学との比較で、東洋医学を非科学的とかローテクだと見る向きもあるかもしれませんが、決してそうではなく、東洋医学は長い時間と多くの労力によって培われた医学体系なのです。ミクロの現代医学に対するマクロというスタンスがあるために、病気の原因のとらえ方や治療方法が、現代医学とは異なった展開になっている、ということなのです。

ミクロの長所とマクロの長所
現代医学と東洋医学どちらがよいか」という質問をよくされます。しかし、前記のような理由から「いいか悪いか」という比較自体が適切ではないといえます。病気を治すという目的は同じで、そのためのアプローチ方法が違うだけなのです。
 日本では、歴史的な背景もあって「現代医学がベター」と一般的には考えられているでしょう。しかし、すべてにわたってミクロマクロよりすぐれているかとなると、あながちそうとはいえません。
 たとえば、現代医学では研究の細分化に伴って医師の専門分野も細かく分かれ、自分の専門科目以外は治療できないという医師が増えています。その結果、いくつかの症状をかかえた患者が診療科をたらい回しにされたり、薬を重複処方されたりというようなことが起こるのです。
 その点、マクロの視点で全身を対象にする学習と訓練を積んだ東洋医学の治療者なら、一人で全身各部の症状に対応できるのです。
 逆に、血管やリンパ管を縫い合わせるというようなケースなら、現代医学の方が対応は早いでしょう。どこも切れていないのにジワジワ出血するという症状だと東洋医学の方法が使えますが、解剖学的に見て明らかに切れているなら、ミクロの技術で縫う方が治りやすいでしょう
 どちらがよいかではなく、そういう違いがあるから、それぞれがよいと考えるべきです。すべてを現代医学で治す必要はないし、東洋医学で治す必要もないのです。




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030039


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 日本実業出版社「東洋医学のしくみ」

出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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