子宮肉腫
【しきゅうにくしゅ】
Uterine Sarcoma
上皮(じょうひ)(皮膚や粘膜)の悪性腫瘍(しゅよう)をガンと呼びますが、肉腫は上皮以外の組織から発生する悪性腫瘍です。子宮の本体は平滑筋という筋肉ですが、袋状になっており、袋の内側は内膜と呼ばれる粘膜でおおわれています。子宮内膜は腺組織と腺組織を支持する結合組織(間質)からなります。内膜を構成する組織のうち間質は上皮以外の組織です。
子宮肉腫は病理組織学的に3つに分類されます。頻度の高いものから、[1]子宮平滑筋肉腫(50%)、[2]ガン肉腫(40%)、[3]子宮内膜間質肉腫(10%)があります。ほとんどのものが子宮体部から発生しますが、それぞれの性質はかなり違います。
[2]のガン肉腫は肉腫と呼ばれますが、性質は子宮内膜ガンに近く、抗ガン剤が比較的よく効きます。顕微鏡で観察した場合に肉腫に見える組織を含んでいるという理由で「ガン肉腫」と呼ばれますが、基本的な性質はガンです。子宮内膜ガンと同様に主にリンパ行性に転移します。悪性度の高い子宮内膜ガンに対する治療方針に準じた治療が選択されます。
[1]の平滑筋肉腫は本当の意味での肉腫です。子宮の壁にあたる筋肉組織、平滑筋から発生します。リンパ行性転移はほとんど起こさず、血行性に肝臓や肺、骨に転移を起こします。手術で完全に腫瘍を摘出できた場合でもほとんどの場合再発し、放射線治療、抗ガン化学療法もほとんど効きません。腫瘍の広がり(ステージ)はどうであれ、予後は不良です。
[3]の子宮内膜間質肉腫は、その名前のとおり、子宮内膜の支持組織である間質から発生します。性質としては、ガン肉腫と平滑筋肉腫の中間のような存在です。リンパ行性転移と血行性転移と両方の転移形式をとります。とくに血管の中に入り込む性質(脈管侵襲)が強く、静脈内に腫瘍塞栓(しゅようそくせん)(腫瘍が血管の中で塊をつくり塞いでしまう状態)をつくります。増殖が非常に活発で急速に進行するタイプ(未分化子宮内膜肉腫)もありますが、多くのものは増殖、発育が遅く、病状の進行は比較的緩やかです。そのような理由から、一般に予後は悪くないと考えられていますが、放射線治療、抗ガン化学療法には抵抗性で、手術以外に有効な治療法はありません。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035442 |