妊娠と腎臓(妊娠高血圧症候群および腎臓病の合併妊娠)
【にんしんとじんぞう(にんしんこうけつあつしょうこうぐんおよびじん】
Pregnancy And Renal Function
妊娠すると母体は2つの生命を維持するため様々に変化します。しかしもともとある種の基礎疾患をもつ人ではこの変化に反応できず、母体や胎児に重篤(じゅうとく)な影響がでてくることがあります。こうした基礎疾患としては腎臓病・糖尿病・高血圧・甲状腺機能亢進症・膠原(こうげん)病などがあげられます。ここで取り上げるネフローゼ症候群・慢性糸球体腎炎などの腎臓病は、しばしば妊娠可能な年代の女性にみられますので妊娠との関係が重要です。病状によっては母体・胎児両者の予後不良の可能性があり妊娠が望ましくないとされる場合もありますが、医療の進歩に伴いその判断基準は変化しつつあります。
とくに基礎疾患がない妊婦でも妊娠中に、高血圧やタンパク尿・浮腫(ふしゅ)といった腎臓病に類似した症状がみられることがあり(純粋型)妊娠高血圧症候群(旧妊娠中毒症、日本産科婦人科学会により2005年4月から名称が変更)とよばれます。この妊娠高血圧症候群という名称は胎盤で産生される毒によって発症すると考えられたことに由来しています。現在では、妊娠初期に何らかの原因で胎盤がうまくつくられないときに2次的に全身の臓器の血流障害が起こって発症するといわれていますが、いまだに十分解明されていない疾患です。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035148 |