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標準治療病名 > 腎・尿路・泌尿器

膠原病と腎
【こうげんびょうとじん】

Collagen Disease And Renal Disease

膠原病と腎

 膠原病は病変が多臓器にわたることがしばしばあります。腎病変として糸球体、血管、尿細管さらに間質などにいろいろな病変が出現します。腎障害で頻度が高い疾患として全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、シェーグレン症候群などがあげられます。以下、疾患別に腎病変について記述します。

1)全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)
 SLEでは、免疫系が自己を攻撃してしまい、全身臓器に障害を引き起こします。とくに中枢神経障害、腎障害は生命予後に大きな影響を与えます。

2)関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)
 関節リウマチでは様々なタイプの腎障害が起こりえます。最も多くみられる糸球体病変は膜性腎症で、薬剤による場合と、そうでない場合があります。治療に用いられる非ステロイド系消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬により腎障害をもたらすこともあり、また金製剤、ブシラミン、D-ペニシラミンなどの抗リウマチ薬により腎障害(2次性膜性腎症)が生じることもあります。アミロイド線維が腎組織に沈着するアミロイドーシス合併は腎生検が必要となるような症例の5~20%にみられ、タンパク尿・腎機能低下などが認められます。尿検査および血液検査などで腎機能異常の有無に注意を払うことが大切です。
 原病の治療が基本となりますが、ネフローゼ症候群を示した場合は腎生検を施行し病理組織変化を確認して、ステロイド薬の投与量、投与期間を決定することが望まれます。薬剤性の関与が疑われる場合は薬物の投与を中止します。薬剤性の膜性腎症は、軽快までに何カ月もかかることがあります。

3)シェーグレン症候群(Sjogren's Syndrome)
 シェーグレン症候群の腺外病変として腎、肺、肝、甲状腺などの臓器が知られています。腎障害は、単核球の浸潤による尿細管の間質性腎炎が主体となります。尿タンパクは陰性のことが多く、尿細管障害はアシドーシスや低カリウム血症、腎石灰化や骨軟化症を合併することもあります。間質性腎炎・間質性肺炎など内臓病変を伴う例ではステロイド治療が必要になることもあります。

4)強皮症
 強皮症患者さんの約5~10%で、発症より数年の経過中、頭痛、けいれん発作、視力障害、急激な血圧の上昇(悪性高血圧)を認め、急激に腎機能が悪化することがあり、これを強皮症腎クリーゼと呼んでいます。この場合は速やかに降圧療法を行う必要があります。腎クリーゼの第1選択薬はアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)ですが、約1/3の例では末期腎不全となり、透析療法を要します。透析導入後もACE阻害剤を使用することで透析をしなくてもよくなった症例もあります。

5)結節性多発動脈炎
 全身の各臓器に分布する臓器が標的になり、多臓器にわたる臨床症状が特徴の病気です。約70%でタンパク尿、血尿、腎不全などの腎障害がみられます。早期診断、早期治療が行われれば予後は比較的良好です。急性炎症期にはパルス療法を含むステロイド大量・免疫抑制剤療法が行われ、高度な腎不全には血液透析療法が行われます。

6)混合性結合組織病(MCTD)
 MCTDでは腎機能低下を示す例は少なく、多くは腎症が軽症です。腎症が出現した場合は、ループス腎炎治療に準じます。ステロイド薬の反応性は良好です。

 以下、全身性エリテマトーデスについて記述します。




寺下医学事務所 (著:寺下 謙三)
「標準治療」
JLogosID : 5035149

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