火災警報器
アメリカでは、住宅用火災警報器の設置義務化で死者数が半減した。日本でも、新築においてはすでに義務化されている。
住宅火災の死者数は毎年1000人を超え、その約7割を高齢者が占める。
特に就寝時間帯に多く、逃げ遅れが大きな原因といわれる。
火災警報器はその対策として大きな役割を果たす。
家庭用の火災警報器は、そのしくみから大きく二つに分けられる。
熱感知方式と煙感知方式である。
熱感知方式は、その名の通り熱を感知して警報を発する装置だ。
さまざまな方式があるが、もっとも単純なものを左ページに示す。
これは電熱器の温度調整に使われるバイメタルを利用したもの。
温度が高くなるとバイメタルが歪(ゆが)み、警報のスイッチを作動させる。
煙感知方式にもさまざまな種類がある。
例えば「光電式煙感知器」は光の散乱を検知するしくみだ。
煙が感知器に入るとLEDの発する光が煙の粒子によって散乱され、その散乱光を光センサーが検出するのだ。
また、「イオン化式煙感知器」といって、放射性同位元素を利用してイオンを作り、煙が入ってきたときの電流の変化を検知する方法も有名である。
火災警報器で大切なのは、適切な位置に設置すること。
煙感知方式の場合には、煙の特性を考えてセットする必要がある。
煙は上に広がるため、この報知器を低い位置にセットしてもムダだ。
また、熱感知方式の場合には、熱源の近くにセットしなければ、警報音が鳴っても「時すでに遅し」ということになりかねない。
以上のことからわかるように、熱感知方式の警報器はキッチンや車庫に、煙感知方式は寝室や廊下(ろうか)に設置するとよい。
もっとも、寝室でたばこを吸って失火(しっか)するなどという話もよく聞く。
両方の方式の火災警報器を設置するに越したことはない。
警報器の難しいところは、感度をよくすると誤報が増えることである。
例えば、湯沸しの蒸気や掃除の際の埃(ほこり)を火災の煙と間違えてしまうのだ。
反対に、感度を悪くすると、実際の火災時に役立たなくなる恐れがある。
〝狼少年〟とならない警報機を作るには、このさじ加減が大切なのだ。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567139 |