手回し発電
理科の実験用に使われる手回し発電機。現在はラジオや懐中電灯に組み込まれ、防災用としても注目されている。
電気はもっとも身近な現象なのだが、その法則を理解するのは難しい。
その法則を〝見える化〟してくれるものとして、手回し発電機が教育現場などで重宝されている。
「磁気が変化すると電気が生まれる」という電磁誘導の法則を体感させてくれるからだ。
また、防災用品売り場には、この手回し発電機を組み込んだラジオや電灯が売られている。
電池がなくても利用できることが、最大の売りだ。
前述したように、手回し発電機は「磁気が変化すると電気が生まれる」という電磁誘導の法則を利用して発電する。
電気を起こすのは意外と簡単なのだ。
手の代わりに火力や水力で回せば電力会社の発電機にもなる。
手回し発電機は、玩具で使われているモーターをハンドルで回すだけの構造である。
モーターは乾電池で動く直流モーターで、分解するとわかるように、コイルが磁石の中でクルクル回るようになっている。
このコイルを回せば、コイルの中の磁気が相対的に変化し、電磁誘導の法則が働いて電気が起きる。
これが発電のしくみだ。
ちなみに、もっとも身近で実用的な発電機は自転車の発電機だろう。
これも、手回し発電機としくみは同じだ。
モーターと発電機が同じしくみであることは、電動アシスト自転車(74ページ)でも役立っている。
上り坂ではバッテリーから電気をもらってモーターとして働き、下り坂では発電機としてバッテリーを充電するのだ。
意外かもしれないが、マイクロフォンも発電機である。
音声の空気振動で磁石をコイルの中で振動させ、その磁力の変化で電気信号を発生させている。
最後に、「磁気が変化すると電気が起こる」というときの、電気の向きについて付記(ふき)しておこう。
おもしろいことに、電気の向きは磁気の変化を妨げる方向なのだ。
つまり、電磁誘導によって生まれた電流は電磁石を作るが、その電磁石は変化する磁気の、その変化を打ち消す向きなのである。
宇宙の法則は、いわば〝安定志向〟なのだ。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567137 |