はじめに
本書は、ご好評をいただいた前著『雑学科学読本身のまわりのモノの技術』の続編です。
前著同様、自分の身のまわりで当たり前に接していたり、メディアによく取り上げられたりしているさまざまなモノの「技術・しくみ」について、図を交えてわかりやすく解説しました。
解説するために文献等を調べていく中で、しばしば感じることがありました。
「なるほど」と、メーカーの技術力のすばらしさに感銘を受けるとともに、このまま科学文明が発展していくと、身のまわりにあるモノはますます複雑化・高度化し、メーカーや研究者でなければチンプンカンプンの世界に陥おちいるのではないかという心配です。
すべてブラックボックスと化し、「どうなっているのだろう?」という知的関心すら起こらなくなってしまう危険性があるのでは、と思ったのです。
例えば電動アシスト自転車が壊れると、ギヤまわりは自転車屋さんでも修理ができず、メーカーに依頼するしかありません。
こうなったら、「自転車のギヤボックスはいったいどうなっているのだろう?」などという興味はなくなってしまいます。
そして、モノへの愛着も失うせ、「また買えばいい」という発想になります。
昔は、ドライバーとペンチがあれば、自転車のちょっとした修理くらいはできたものです。
その「しくみ」がわかっていたからです。
だからこそ、自転車への愛着も深まったわけです。
そこが重要なのです。
しくみがわかると、モノへの愛着がわくのです。
一般的に、知識があると世界がおもしろく見えるようになります。
例えば、生物の知識が豊富な人が一緒にいると、森を歩くのも楽しくなります。
日頃見過ごしていた草花や鳥、虫の姿がよく見えるようになるからです。
モノの世界も同様です。
技術・しくみがわかると、モノへの愛着が増し、それに囲まれた生活が楽しくなります。
何気なく使っていたモノが、興味の対象に変わるからです。
本書が「科学技術の森」のよき案内役になることを希望します。
そして、身のまわりのモノに、ますます深い関心を持っていただければ幸いです。
涌井 良幸・涌井 貞美
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567100 |