スチームアイロン
日々、当たり前に使っているアイロンだが、そもそもなぜシワが伸びるのだろう。スチームをかけるとなぜ伸びやすいのだろう。
ティファールから大容量のスチームボイラーを装備したアイロンが発売され、「プロの仕上がりが可能になる」と人気を集めた。
大量の高温高圧のスチームを連続噴射することで、アイロンの効きをよくしているのだ。
日本のメーカーも、それにならって多くの機種を発売し、ちょっとしたアイロンブームを起こしている。
日本でも、アイロンがけは卑弥呼(ひみこ)の時代から行なわれていたというが、アイロンをかけるとなぜシワが伸びるのだろう。
その方法のしくみを調べてみよう。
アイロンをかけるとシワが伸びる理由は、ナノの世界で説明される。
繊維(せんい)分子の構造にまで視野を拡大しないと理解できないのである。
例えば、シワができやすいことで知られる綿について考えてみよう。
綿は繊維分子同士が手をつないだ「くさり」状態になっているが、そこに水分が加わると部分的にバラバラになり、再結合する。
このとき、元の位置とは異なった位置で結びついてしまう。
これがシワの原因である。
このシワをなくすには、まず再結合を外して元に戻す必要がある。
それが、スチームを用いたアイロンがけ。
高温の蒸気を当てることで、ズレた分子の位置をリセットし、高温のアイロンで適正に再配置させる。
こうして、元のスッキリした形が再現されるのである。
ウールの場合は、多少しくみが異なる。
ウールは人の髪と同様、表面がキューティクルで覆われている。
これは魚の鱗(うろこ)のようなもので、水を吸うと開いてしまう。
洗濯して乾燥するとパサついてしまうのはこれが原因である。
そこで、蒸気をかけて熱でそのパサつきをリセットするのが、アイロンがけのしくみである。
150度くらいのスチームアイロンを1センチくらい浮かせ、蒸気を当てるようにかけると、きれいに仕上がる。
以上のように、アイロンがけのメカニズムはたいへん複雑だ。
当たり前のモノほどしくみは難しいといわれるが、アイロンがけもその一例だろう。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567102 |