インターネット放送
パソコンやスマートフォンで簡単に動画が見られるが、分類上それは「放送」ではない。通信と放送はどう違うのだろうか。
情報のデジタル化によって、技術としての通信と放送の境がなくなった。
放送内容を通信で流せば、それは見かけ上、放送と区別できない。
実際、スマートフォンで流れる映像を見たとき、これが通信で送られているのか、放送で送られているのか、外見から判別するのは不可能だ。
最初に、放送と通信の基本的な違いを確認しておこう。
放送とは不特定多数の相手に向かってデータを送ることをいう。
一方、通信とは特定されている相手にデータを送ることをいう。
不特定と特定の違いが分かれ道なのだ。
近年は映像や音声などのデータをインターネットで送るインターネット放送が人気だ。
IP放送、ネット放送などとも呼ばれている。
インターネット放送は、テレビやラジオの放送内容を同時にインターネットに送信するIPサイマル放送と、サーバーに蓄積してあるデータをユーザーの要求に応じて送信するオンデマンド放送の2種類に大別される。
ただし、「放送」と名づけられていても、分類は通信に含まれることに注意したい。
先に述べたように、インターネットには、不特定多数の相手に向かってデータを送信するしくみがないからだ。
視聴者側からすると、「テレビの内容をいつもIPサイマル放送してほしい」と思う。
しかし、放送と通信は別の法律で厳しく規制されている。
特に、コンテンツに対する著作権については、放送法は厳格(げんかく)である。
そこで、IPサイマル放送はNHKの「らじる★らじる」のように、一部のラジオ放送でしか実現されていない。
現在はIPマルチキャスト放送と呼ばれるIPサイマル放送のための技術が確立されている。
ネットワーク上の複数の相手を指定して同じデータを効率よく送信する技術で、ケーブルテレビのようにインターネット放送を可能にした。
しかし、業界と省庁の利権や著作権の問題が複雑にからみ合い、デジタル化の本来の目標である「放送と通信の融合(ゆうごう)」は実現できていない。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」 JLogosID : 8567062 |