生体認証
かつてSF映画などに現れた生体認証が、今や日常で利用されている。身分証や鍵などが不要になる生活が実現しつつある。
現在、多くの銀行のATMコーナーに静脈認証(じょうみゃくにんしょう)の装置が置かれている。
この装置は指や手の平の静脈パターンを赤外線で読み取り、本人を確認する。
体の一部で本人認証をするのである。
一昔前まではSF映画の世界で描かれた光景が現実になっているのだ。
静脈が利用されるのは、静脈のパターンが人によって異なるからだ。
このパターンを見るには赤外線を当てればいい。
静脈を流れている赤血球中のヘモグロビンは、酸素を失って赤外線を吸収しやすい。
そのため、当てられた赤外線は静脈で吸収され、パターンが暗く映し出されることになる。
このように生身で本人確認する認証方式を生体(せいたい)認証と呼ぶ。
バイオメトリックスと呼ぶほうが有名かもしれない。
生体認証のメリットは、カードなど、本人を確認するためのモノが不要なことである。
また、他人が本人の代わりをする「なりすまし」も不可能である。
おかげでシステムが安全になり、利用者も身軽になれるのだ。
静脈認証以外にも、さまざまな生体認証がある。
昔から利用されているものに指紋認証がある。
これは犯罪捜査で知名度が高いが、実用面でも利用されている。
例えばパソコンの本人確認用として、指紋の読み取り装置が販売されている。
システムの安全性に大いに貢献しているのだ。
SF映画などで有名なのは虹彩(こうさい)認証であろう。
瞳(ひとみ)の模様のパターンで本人を確認する方法である。
虹彩も人によって千差万別だからだ。
最も理想的なのは素顔の生体認証であろう。
人間同士の自然な認証方式であり、違和感がない。
テロ対策などで研究が進められ、一部では実際に利用されようとしている。
ところで、生体情報は変更が不可能である。
カードなどは再発行が可能だが、生体認証はそれができないのだ。
したがって、一度登録されると訂正がきかない。
悪用されれば一生本人のわざわいになる。
むやみに登録するのは危険であることを肝(きも)に銘じておこう。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」 JLogosID : 8567021 |