【60歳からの人生を愉しむ心理学】第5章 人生の後半戦は5つの「力 >
フラストレーション耐性の高い人ほど老後を愉しめる

ストレスがかかるとフラストレーション(欲求不満)が起こりますが、それに耐えて事態を解決する力のことを「フラストレーション耐性」と呼びます。
お父さんが息子とキャッチボールをするとき、構えたミットをめがけて投げれば上手に捕りやすいので、子どもは喜びます。けれどもそんなキャッチボールを一〇〇回やっても、子どもの捕球技術は上がりません。
ですからときどき、変なところに投げる。捕ろうとしたのにうまく捕れなかった-これはストレスです。
最初は子どもも怒ったり、捕れなくてがっかりしたりするでしょうが、次は捕ってやろうというモチベーションが生まれます。そうやって繰り返しているうちに、思わぬところに球がきても捕れるようになってきます。お父さんは、ときにはわざと変な球を投げなければいけない。
今は、子どもが喜ぶことばかりする親が増えているようです。職場でも、上司が部下に甘い。叱ると相手がイヤな顔をするし、叱らないほうがいい関係が保てると思っています。けれども、そうやって作った関係は本物ではありません。結局、人間関係を保つスキル(技術)も育っていかないのです。
変な球も捕れるように努力してこそ、キャッチボールが上手になっていく。こんなふうにストレスを解決していける人はフラストレーション耐性が高いと言えます。
「もうイヤだ! 何で僕が捕れないような球を投げるんだよ!」と怒って泣いたり、キャッチボールをやめてしまったりする人はフラストレーション耐性が低い。
現代はいろいろなことが便利になり、あらゆることになるべくストレスがかからないよう、至れり尽くせりの世の中になっています。これは、いつも捕りやすい球ばかり投げられているようなもの。キレやすい人間が増えているのも当然で、全体的にフラストレーション耐性の低い世の中になっていると言えます。
年をとるということは、それ自体ストレスです。あちこち衰えてくるし、失う物も多い。いちいちキレていたら身が持ちません。フラストレーション耐性の高い人のほうが老後を愉しめるのです。
渋谷昌三(目白大学教授)
![]() | 日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授)) 「60歳からの人生を愉しむ心理学」 JLogosID : 8615432 |