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60歳からの人生を愉しむ心理学第2章 「老い」へ向かう軽やかな >

人間は意味のないことに耐えられない

人間は意味のないことに耐えられません。たとえば、あちらの部屋からこちらの部屋へレンガを運ぶ。そしてまたこちらの部屋からあちらの部屋へレンガを戻す。何のためにかはわからないけれど、ひたすらあっちへこっちへ、往復させる。
このような無意味な作業は非常に苦痛で、ストレスが高いことがわかっています。
運んだレンガで暖炉を作る、というような意味があれば、その作業はやりがいのあるものに変化します。さらに、その暖炉でおいしい焼き芋を作ろうというような目標があると、作業はぐっと楽しくなってきます。レンガを運ぶスピードもアップするかもしれません。
やることは同じなのに、心理的に苦痛になったり、喜びになったり。作業効率が悪くなったり、よくなったり。人の心は使いよう。毎日の仕事が自分にとって無意味なレンガ運びであれば、会社と家との往復は苦痛でストレスです。けれどもそこに意味づけができれば、やりがいが湧いてくる。ですから、人は自然と自分のやることに意味づけをします。
新入社員の頃は、まずは仕事を覚えることが目標です。技術を身につけ、いつか「こんな仕事がしたい」と思い描きます。結婚すれば、「家族を養うために一生懸命働く」という意味もプラスされるでしょう。
仕事ではじょじょに役職が上がったり、若いときよりもずっと重要な仕事を任されたり。家庭では子どもが小学校に入学した、中学生まで成長した、次は高校受験だ……と次々に階段をのぼっていきます。
ところが「定年」が視野に入ってきた頃から、人生の目標をもう一度立て直す時期がくるようです。子どもはそろそろ独立、自分がこの会社で働けるのもあと数年。そんな、「階段を降りていく」人生の後半戦にどんな意味づけをしていくか。
これがうまくいくかどうかで、その人の満足度は大きく変わってくるでしょう。
世の中もイケイケドンドンの右肩上がりの時代は終わりました。むしろ「後半戦」の意味づけを上手にできる人こそ、これからの時代に本当に合った生き方ができるのではないでしょうか。意味のない、意気消沈した後半戦より、生きがいのある後半戦をクリエイトしていきたいものです。




渋谷昌三(目白大学教授)
日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授))
「60歳からの人生を愉しむ心理学」
JLogosID : 8615384


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