【東京-五つ星の蕎麦】郊外の名店厳選10軒 > 八王子市
坐忘
【ざぼう】

兄弟で料理とそばの二人三脚

高い板塀の狭間にぽっかり口を開けた、まるで茶室のにじり口のようなしつらえの玄関を入ると、板座敷に長い入れ込みのテーブルを置き、天井からは飾り障子越しの淡い光、江戸時代の生け花の教則本を一枚一枚ばらして一面に貼った壁など、店内は純和風の、しっとりした大人の雰囲気にあふれている。当地で50年以上つづいた飲食店を、父の亡き後に当主の萩原久信さん・敏行さん兄弟が継ぎ、平成5年に店を建て替えた際、手打ちそばの店として再スタートしたという。
久信さんは主に料理を、敏行さんがそばを担当する。そばの基本はせいろと田舎の2つ。せいろは丸抜きを石臼挽きする十割そば、田舎は玄そばの手挽きと、丸抜きを粗めに挽いた粉を等量ずつ合わせ、つなぎを1加えた外一そばだ。つゆは久信さんが作り、まろやかな味と香りのバランスがいい。
緑川や雅山流など通好みの酒をそろえ、天たねの海老のかき揚げ、黒豚角煮芋餡、生湯葉の刺身など酒の肴も秀逸。
![]() | 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京-五つ星の蕎麦」 JLogosID : 14071308 |