【東京五つ星の鰻と天麩羅】鰻の名店厳選40軒 > 新宿区
蒲焼 柳川 たつみや
【かばやき やながわ たつみや】

「食の街」で頑固に味を守る

昭和23年、先代が「店を開くなら神楽坂で」と勧められてこの地に開業。神楽坂のほぼ中ほど、善国寺(毘沙門天)の右斜め前に延びる本多横丁に面して、昭和46年建築のノスタルジックな建物が目を引く。外観にふさわしい、さびた造りの店内では、2代目の高橋善夫さん、その娘夫婦の絵美子さん・次郎さんが忙しく立ち働いている。店は井伏鱒二や常盤新平らの文人に愛され、また森敦が書いた記事に惹かれて、オノ・ヨーコ、ジョン・レノン夫妻が訪れたこともある。
10~15分ほど蒸してから備長炭で焼くうなぎは、今も守っている先代のモットー「やわらかいうなぎは食べやすい」の言葉どおりにやわらかく、身の側だけを焼くため焼き色はそれほど濃くはない。醤油と味醂だけで作るさらさら辛口のたれが、うなぎの脂と渾然と混じり合って味わいをいっそう深くする。
店名どおり、品書はうなぎと柳川だけ。今どきはもう珍しくなった、脇目を振らない頑固な店だ。
![]() | 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京五つ星の鰻と天麩羅」 JLogosID : 14070728 |