【旬のうまい魚を知る本】 >
▼右手のノミではがし左手ですばやくキャッチ

一色海岸の手さぐり漁は見学するだけでも心が浮き立ってくる。解禁の日の正午に海岸に出てみると、磯では女たちが用意万端ととのえて、潮の引くのを待ちながら井戸端会議。みなカッパに磯タビのスタイル。足元の竹籠には、足ヒレ、ノミ、水中眼鏡、スカリなどの道具がそろっている。午後1時を過ぎて潮が引くと、さまざまな形をした岩礁と大小の石が露出してきた。これがトコブシの格好の生息場所になっているのだ。
スカリを腰に結んだ女たちは、腰ほどの水深まではいっていき、時には口元まで水面に沈めて、岩の下や岩の穴を左手でさぐる。まさに手さぐり漁である。トコブシを見つけたり、あるいは左手でさぐり当てると、右手に持ったノミではがして、すばやく左手で捕まえる。あるいは小さな岩をひっくり返し、トコブシを落として捕獲する。「私は体が大きいから、人よりも長く腕がのびて、手さぐり漁では有利なんですよ」とこの日の大漁にご満悦の鈴木さんだった。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070124 |