【旬のうまい魚を知る本】 >
▼「船内一尾凍結イカ」は釣りたての味にかぎりなく近い

スルメイカの産地は全国に多いが、そのなかでも注目したいのが能登半島富山湾沿いにある小木(おぎ)(石川県内浦町)。ここの「船内一尾凍結イカ」は、イカ漁業の革命といえるほどの傑作だと私は思っている。一般に魚は釣りたてよりも死んでからほどよい時間が経ったほうが、たんぱく質が旨味成分に変化してうまくなる。でも、どういうわけかイカ類は釣りたてがうまい。船内一尾凍結イカは釣りたての味にかぎりなく近い。仕組みはまるでコロンブスの卵でじつにたわいない。小木のイカ船はスルメイカを釣り上げると、ただちに波形のトレーに1杯ずつ並べ、船内の冷凍室でマイナス40度で急速冷凍する。これで1尾ずつばらばらに冷凍できるだけでなく、うまみを封じ込めて鮮度を保つことができるのだ。
船内一尾凍結イカが登場するまでは、冷凍イカといえば何十杯を一緒に固めるブロックが常識だった。それが1尾ずつの冷凍になった効能はあらたかである。主婦がたとえ20~30杯入りの1箱を買い求めたとしても、2~3杯ずつ袋に分けて冷凍のまま冷凍庫に保存でき、手軽に釣りたての味を楽しめる。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070117 |