別腹
【べつばら】
「甘いモノは別腹」の謎
「もうお腹いっぱい、でも甘いモノなら……」。誰でも一度くらいは経験したことがある「甘いモノは別腹」の法則である。これにはちゃんとした根拠がある。満腹感をコントロールするのは、脳の視床下部というところにある「摂食中枢」だ。食事を摂り、次第に血糖値が上がってくると、人に満腹と感じさせ、人は食事するのをやめる。この満腹感にはもう一つ「感覚特異性満腹」と呼ばれるものがある。同じ味のものを食べ続けると飽きてしまい、結果として満腹感を覚えるというものだ。中枢が一定の刺激(同じ味のもの)に対してのみ満腹情報を出す結果だと考えられている。食事の味はたいてい、塩味、酸味、うま味で構成されているため、食べ続けることでその味に対し感覚特異性満腹を覚えてしまうが、デザートはそれまでの味とは異なる甘味が中心となるため、満腹感を覚えることなく食べられるというわけだ。もう一つ、いろいろな味のなかでも、甘味が最も強い快感を生じさせるものだということも大きな理由だ。甘いものを摂取すると、脳ではβ?エンドルフィンという、麻薬であるモルヒネと同じ働きをする物質がつくられる。すると脳の神経細胞の興奮の伝達に作用する脳内物質ドーパミンもつくり出され、その結果「食べたい」という意欲が生じるという。甘いものはおいしくて快感が生じるということはこれまでの経験から脳が覚えているため、食後のデザートを目にしただけで、脳のなかにはこれらの物質が出てしまうという。また、「好物」を目にすると、脳の摂食中枢が「血糖値が下がった」ことを伝えるオレキシンという物質を分泌する。これが脳内で迷走神経運動核を刺激することで、胃が活発に動き出す。すると胃にゆるみができ、胃の内容物は小腸へと送り出される。こうしてできた胃のすきまも、すなわち「別腹」になる。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820793 |