フォード
【ふぉーど】
自己中心すぎて損もした車王
フォード・モーター社の創業者ヘンリー・フォードは、車を庶民の手の届く範囲の価格にすることを実現し、現代の車社会の基礎をつくりあげた功労者だ。フォード自動車会社を設立後、一九〇八年、「フォードT型」の開発に成功。価格の八五〇ドルは、当時のどの会社の最も安い車より数百ドルも安かった。低価格の秘密は、フォードがつくり上げた組み立てライン。自動車製造に世界で初めて大量生産方式を導入し、大幅なコストダウンに成功したのだ。一九二四年には二九〇ドルという驚異的な低価格も実現させた。部品の標準化、流れ作業、八時間労働制、最低賃金制など、フォードが開発したシステムは、アメリカ産業の発展に大いに尽くしたといえよう。さて、流れ作業という実に画期的で柔軟な方法を開発したフォードだが、その頭の中身は、それほど柔軟とはいえなかったようだ。フォードは、常に自分が正しいと思い込み、反対の意見には決して耳を貸そうとはしない性格だったという。共同経営者や従業員の言葉は聞き入れず、あくまで自分の意見を貫き通そうとし、他人ばかりか自分の息子にまで同様で、二人は常に衝突していたため、フォードは息子エドセルに会社の実権を与えようとはしなかった。エドセルは五二歳で死去するが、周囲の人は、その原因を父親が頑固すぎたからだと評したほどである。T型フォードについても、彼の頑固でワンマンな性格が反映されていた。T型フォードの設計を一九年間も基本的に変えなかったばかりか、一九一二年以後は黒一色。「黒なら何色にでも塗れる」といい張り、ほかの人の意見を受け入れなかったのだ。車社会の大恩人として尊敬されているフォードも、こうしたワンマンぶりと頑固さによって、周囲からの冷たい視線にさらされたことも少なくなかったという。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820760 |