痔
【じ】
「痔」は、実は人間特有の病気
日本人の三人に一人が患っているといわれる「痔」。「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔瘻(あな痔)」など種類はいろいろあるが、ダントツで多いのは痔核である。人間の七割が痔核を持っているというドイツの学者の報告まであるぐらいだ。肛門部分は網の目状に集まった血管とそれを結合する組織でできているが、排便のときに力みすぎたり、座りっぱなしで負荷をかけすぎると、血管が切れたり、うっ血して(血流が滞り)結合組織が増殖し、それがいぼのようにふくらむ。これが痔核である。もともと肛門部分にとくに豊富なのは静脈だが、これには逆流防止弁がない。だから、腹圧によって逆流した血液が肛門部分に滞りやすいということも痔核をつくる原因である。そして、何よりもその原因となっているのが、人間が直立歩行をしているということだ。肛門が心臓よりも下にある人間にとっては、逆流防止弁のない肛門部分の静脈が、血液を再び心臓に戻すのは簡単なことではないのである。つまり、直立歩行ゆえに肛門部分の静脈がうっ血しやすいのだ。実際、痔は人間特有の疾患といわれる。ネコやイヌ、そして人間にいちばん近いとされるサルでも基本的には痔を患うことはないようだ。四つ足で歩く動物は、心臓と肛門の高さが同じであるために、血液が肛門付近に滞りにくい。そのうえ、腹圧がかかることもないから痔にならない理想的な体型なのだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820369 |