九九
【くく】
室町時代以前は「九九、八一」から覚えはじめた!?
小学校二年生になると九九を習うが、当然、一の位から二の位、三の位と進んでいく。当たり前だと思っていたが、その昔、九九を覚えるときには、いちばん難しい「九×九=八一」のほうから覚えていたという。もともと、九九の発祥は、お隣の中国。『万葉集』などの文献から、奈良時代に中国の特権階級から伝わったという記載がある。なぜ難しいほうから覚えるかというと、一説によれば、特権階級のものとされていたため、一の位からでは簡単で広まりやすいため、九の位から数える習わしになったという。日本では、八世紀から九世紀にかけての平城京、平安京、藤原京、長岡京などの遺跡に、九九を落書きした木簡も発見されている。一〇世紀になると『口遊』という書物に、九の位からの覚え方で、「これを九九という」と書かれている。これは、漢文学者で歌人だった源為憲が当時七歳だった藤原為光の子、誠信(幼名は松雄)のためにつくったテキストで、これが現在の「九九」という言葉の語源である。テキストには有名な「九九の表」も記載されていた。ちなみに、チベットでも九九は九の位からの方式で覚えるという。日本では、「九九=八一、九八=七二、九七=六三……」と九の位から進んで覚えていたのは室町時代以前。一の位と九の位、どちらからでも覚える時代を経て、江戸時代初期には、一の位から進めるやり方がスタンダードになったといわれている。元祖の中国でも、いまの日本と同じように、一三世紀になると、「一一=一、一二=二、一三=三……」と一の位から進めるのが風習になった。やはり、簡単な数字からのほうが覚えるのが楽なのだろう。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820247 |