インド仏教
【いんどぶっきょう】
仏教発祥の地なのに、インドには仏教徒がほとんどいない?
仏教発祥の地といえば、インド。ゴータマ・シッダールタ(ブッダ)によって開かれた宗教であるのは周知の事実だ。だが、その発祥の地インドには、現在はほとんど仏教徒がいないという結果になっている。二〇〇五年の調査では、世界には、キリスト教徒が二一億六九六万人(三三パーセント)、イスラム教徒が一二億八三四二万人(二〇・一パーセント)、ヒンドゥー教徒が八億五一二九万人(一三・三パーセント)、仏教徒は三億五九四万人(五・九パーセント)である。人口一一億をゆうに超えるインド人が仏教徒ならば、世界で仏教徒が三億余のはずがないと思えるのだが、インドでは、その八一・四パーセントがヒンドゥー教徒、次がイスラム教徒で一二・四パーセント。仏教徒はキリスト教徒やシーク教徒よりも少なく、一パーセントにも満たないのだ。インドの歴史を紐解いてみると、ブッダ以降、仏教はガンジス川中流域から各地へと広まっていったが、四世紀にインドがヒンドゥー教を国教とするグプタ朝によって統一されたため、その勢力によってヒンドゥー教が全土に広まっているのだ。その後、グプタ朝が衰退するも、その後も政治は安定せず、民衆は仏教よりもヒンドゥー教を信仰するようになってしまったようだ。それでも、インドの北西部では九世紀頃までは仏教僧院が栄えており、アジアからやってきた僧侶たちも仏教を多く学んでいた。だが、仏教は徐々に衰退していき、一一世紀にはインドに侵入してきたイスラム教勢力によって僧院が破壊的な打撃を受けて、その後、イスラム教のモスクやヒンドゥー教の寺院に改装されてしまう。このときインドの仏教文化はほぼ終焉を迎えてしまったのだ。インドではそのような結果に終わったが、それ以前にスリランカや中国、東南アジア、そして日本にも朝鮮半島を通じて伝わっており、いまでも各国で信仰されている。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820067 |