沸点
【東京雑学研究会編】
§水の沸点は一〇〇度ではなかった!
水を熱すると、やがて沸騰する。沸騰すると、内部に気泡ができ、気体を発生する。
水の沸点は何度かといえば、小学生の頃、理科の実験で「水の沸点は摂氏一〇〇度」と教わって以降、疑ったことはないはずだ。沸点とは液体が沸騰する温度のことだ。水が沸騰するのは、なにがなんでも一〇〇度。これは常識として誰でも知っている。
しかし、正確にいえば、水の沸点は九九・九七四度だった。「一〇〇度ジャスト」ではなかったのだ。
水の沸点は気圧の影響を受けるため、測定の状況によって異なっていた。それが一九八〇年代に精密測定技術が向上したことによって、改善されたのである。そこで、国際度量衡委員会では一九八九(平成元)年に、水の沸点を九九・九七四度と改定した。
改定の背景には、いくつかの要因があった。まず、科学技術の発達とともに研究機関などでは、厳密な温度数値が必要になっていた。しかし、従来の数字では実験結果などに誤差を生じがちだった。
そういった理由があり、沸点の新目盛が求められていたというわけだ。新目盛は改定の翌年、一九九〇(平成二)年一月一日から研究機関などで実際に使われている。
水の沸点以外にも細かな改訂は行われている。例えば銀の凝固点は、従来正しいと思われていた摂氏九六一・九三度より〇・一五度低いことがわかっている。日常生活にはなんら影響しないが、仕事として日夜、コンマの単位と格闘している人や専門分野の研究者にとって、無視できない数値である。
蛇足だが、沸点改定以降にもちいられた小学校の理科の教科書では、つぎのように表現されている。「沸点は約一〇〇度」あるいは「一〇〇度付近」と。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670830 |