ピカソ
【東京雑学研究会編】
§ピカソはどうして自分の名前を覚えられなかったのか?
二〇世紀を代表する天才画家、パブロ・ピカソが、自分の本名を覚えられなかったのは本当の話である。理由は、彼の本名があまりに長い名前だったから。
「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・ド・ラ・シプリアーノ・クリスピン・クリスピニアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ」
なんと、これが一八八一年一一月一〇日に命名された、ピカソのフルネームなのだ。天才といえど、これでは、覚えろという方が無理だろう。
国学院大学栃木短期大学教授の笹本克彦先生によれば、彼の名前がこんなにも長いわけは、「祖父・伯父・父・乳母など七人分の名前をふんだんに盛り込んだため」なのだそうだ。
もともとヨーロッパには、最も神聖とされる名前を、最後に持ってくるという習慣がある。ピカソの名前の最後をしめる「シプリアーノ・サンティシマ・トリニダード」は、キリスト教では、神・キリスト・聖霊の三位一体を意味する言葉。本人の幸せを祈り、さまざまな願いが込められた愛情深き名前であったわけだが、長すぎて実用的でないため、結局は略して使っていたのである。
さて、ピカソのこの本名、出生届がなされたスペインのマラガ市役所に記録として残ってはいるものの、彼の長い生涯にはおよそ無縁のものであったという。
それもそのはず、ピカソ本人も覚えていなかったというのだから。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670788 |