ナメクジ
【東京雑学研究会編】
§ナメクジはジレンマに苦しんでいる?
渦巻きの殻を背負ったユーモラスな姿で、「でんでん虫」と子どもにも親しまれているカタツムリ。ところが、殻を背負っていないナメクジは、「ひゃっ、気味悪い」と嫌われて、塩をかけられたりする。
そもそもナメクジは、カタツムリの仲間の陸貝だったのだが、進化の過程で殻を退化させたのである。では、どうして体を保護し、乾燥を防ぐ便利な殻を、わざわざ捨て去ったのだろうか?
それは、殻を作るためには、多量のカルシウム分が必要だからである。カルシウムを得にくい土地では、繁殖しにくいし、絶滅しかねない。そこで、粘膜で体を覆って、殻がなくても生きていけるよう進化したのである。そのため、ナメクジはより広い生息域を得ることができた。
ナメクジの表面を覆っている粘膜は、大変ねばっこいし、殻を捨てたため、カタツムリよりも湿気の多い場所を好む。
また、カタツムリは、丈夫な殻の中に内臓があるが、ナメクジは、軟らかい体の内部に内臓を収めている。そのため、内臓をコンパクトにしなければならず、しかも、移動するための蠕動運動を行うたびに、それらの内臓が圧迫されている。
ナメクジが停止しているとき、体を太く短くしているのは、内臓にかかる圧迫を少しでも軽くするためである。
ナメクジは、殻を捨てて身軽になり、新天地に進出して生きていける範囲を広げたものの、その分だけ苦しまなくてはならないという、ジレンマに悩んでいるのである。
ナメクジの中でも、コウラナメクジ類などは、殻の痕跡であるカルシウム質の甲羅を持っている。体の中に埋没しているので、外側から見てもわからないが、イカの甲羅のような感じである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670716 |