読書
【東京雑学研究会編】
§乗り物の中で本を読むと気持ちが悪くなるのはなぜか?
乗り物の中で本を読んでいる人をよく見かける。読書好きで寸暇を惜しんで読む人、必要に迫られて読んでいる人、時間つぶし……とさまざまであろうが、読んでいるうちに気分が悪くなった経験を持っている人はけっこういることだろう。
それは乗り物酔いの一種で、原因にはいろいろあるようだが、ほとんどが「感覚混乱説」で説明できるそうだ。乗り物にはスピードの変化によるショックやカーブにともなう揺れ、上下振動などがつきものである。これらの動きは、内耳の三半規管や耳石などの平衡器で感知されている。平衡器は人体のバランスを保つための器官で、まっすぐに歩いたり、立ったりするのに重要な器官だ。
平衡器とともに重要なのが視覚。視覚が周りの景色の移り変わりをとらえることも、人体のバランスには必要なのである。例えば、ハイウェイを車で走っているとき、この先にカーブがありそうだとか、路面が陥没していそうだとか、いろんなことを予測しながら自分の身体を状況にあわせていくことも大切である。目と耳両方からはいってくる情報が一致して、はじめて人体は安定したバランス状態になるのである。
ところが、本を読んで一点を見続けていると、平衡器が乗り物の動きをとらえてはいても、視覚からの情報がはいってこないので、目と耳の情報が一致しない。やがて、脳が混乱し始め、吐き気やめまいなどの症状となって現れる。
乗り物酔いはほんとうにつらいもの。特に、乗り物酔いをしやすい人は、本を読むより、できるだけ遠くの景色に目をやって、リラックスするよう努めるのがいちばんいいようだ。また、友だちとおしゃべりをして過ごすこともいいかもしれない。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670670 |