徳川慶喜
【東京雑学研究会編】
§最後の将軍、徳川慶喜は維新後は趣味に生きた?
徳川幕府の最後の幕をひいた徳川慶喜。彼は激動の幕末から明治を生き抜いた、歴史の生き証人だが、政治の表舞台を引退してからは、三三歳という若さで隠遁生活に入った。
彼は実は趣味人だったのである。隠遁の地、静岡で、彼は鉄砲猟、謡曲、油絵、写真と次々に熱中する。将軍としての贅沢はできないものの、生活の心配をする必要はないわけである。のんきに遊び、気儘に暮らしたようだ。新しもの好きで、町中を自転車で走り回っていたというようなこともあったらしい。
二人の側室に二一人もの子を生ませ、日々趣味の世界に没頭する暮らしは平和そのものである。彼は「夢よ、もう一度」というよからぬ野心を捨て、流れのままに時代にそって生きたのである。思えば、いちばん楽な生きかたを選択したのかもしれない。
自らが撮った写真は後世に残され『将軍が撮った明治』(朝日新聞社)として出版されている。なかなか芸術性のある作品も残されているとか。
平均寿命が五〇歳という当時に七七歳まで生き、彼はそれなりに人生を楽しんだのかもしれない。案外、将軍を引退した人生は彼にぴったりだったようである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670669 |