通りゃんせ
【東京雑学研究会編】
§「通りゃんせ」は、なぜ帰りが怖い?
とおりゃんせ とおりゃんせ……、とはじまるこのうた。少し年配の人なら子どもの頃、いちどは遊んだ経験があるだろう、日本の代表的なわらべうたである。
正確には、江戸期のわらべうたと言われている。おそらく、江戸時代の子どもたちもこのうたを歌って遊んでいたのであろう。この伝統あるわらべうた遊び、ひと昔前までは、公園や広場であたりまえのように見かけることができた。そういえば、最近ではほとんどこの遊び、見られなくなってしまった気がする。
遊び方は、こんなふうだ。
まず、二人が向き合い、互いに両手を上にあげて鳥居の形を作る。
残りの子どもたちは一列になって、「通りゃんせ」を歌いながらこの鳥居をくぐるのである。このうたの最後に♪いきはよいよい、かえりは怖い……と歌うと、鳥居役の二人が♪怖いはずだよ、キツネがとおる、と歌い、鳥居をくぐって逃げようとするものをつかまえる。つかまった子どもが今度は鳥居となり、遊びが再開されるのである。
「通りゃんせ」の行きがよくてもかえりが怖いこの場所、実は埼玉県の川越市だと言われている。
川越にはかつてお城がありその近くに三芳野神社が建立されていた。
幕府とかかわりが深かったこの神社、庶民には年に一度の参詣がやっとゆるされる場所であった。その参詣も、まわりをきょろきょろ見ようものなら、警備の者からたちまち怒鳴り声が飛んでくる場所だったらしい。
そんな、庶民の落ち着かない気分が「行きはよいよいかえりは怖い」と表現されたのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670666 |