シックハウス症候群
【東京雑学研究会編】
§「シックハウス症候群」とは何か?
新しい家を建てて、大喜びで暮らしていると、家族のからだに異常が起こる。一九九〇年代前半から、そんなケースが増えてきて問題になっている。
これがシックハウス症候群だ。オフィスやマンションの場合はシックビル症候群、学校の場合はシックスクール症候群という。
原因は、建物の建材、塗料、接着剤、カーテンなどに含まれる人体に有害な化学物質だ。生活しているうちに、少しずつこれらの有害物質を体内に取り込むことで、やがてさまざまな症状が起こってくる。
はじめは、目が痛む、のどが痛む、鼻が乾く、鼻水が出るなどの症状だ。かぜや疲労の症状と変わらないし、急激な変化ではないから、家のせいだとは気づきにくい。
それがやがて、頭痛、めまい、耳鳴り、食欲不振、吐き気、下痢、鼻血、動悸、背中や胸の痛みといった身体症状や、睡眠障害、うつ、イライラ、思考力や記憶力の低下といった精神症状が現れることになる。
有害物質で特に問題となっているのは、揮発性有機化合物(VOC)だ。発ガン性が指摘されている物質もある。
皮膚、粘膜への刺激性が強く、呼吸器障害や神経障害の原因となるホルムアルデヒド(ホルマリン)、吐き気、頭痛、めまいなどの原因となるトルエン、キシレンなどのベンゼンやベンゼン誘導体などの化学物質が人体に悪影響があるとされる。シロアリ駆除剤クロルピリホスの影響も大きい。
国もようやく法的な規制に乗り出した。二〇〇三(平成一五)年七月施行の改正建築基準法では、ホルムアルデヒドの発散量によって建材を四ランクに分類し、ランクによって内装に使える面積を制限している。厚生労働省もビル衛生管理法を改正し、学校、ホテルなど一定以上の施設の新築や大規模改修時にホルムアルデヒドの測定を義務づけた。
ただし、悪影響が認められている一三種類のうち、規制されるのはわずか二種類だ。
二〇〇二(平成一四)年版の『環境白書』によれば、現在推計で約五万種以上の化学物質が流通し、日本だけでも毎年三〇〇ほどが新たに投入されているという。有害性はすぐにわからないものも多い。業界や行政の的確な対応は急務だろう。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670426 |