サナダムシ
【東京雑学研究会編】
§サナダムシは、なぜ消化されないのか?
サナダムシは、人間の体に寄生して、栄養を奪ったり、多くの病気の原因になったりする。
一口にサナダムシと言っても、回虫や條虫など、さまざまな寄生虫の総称であり、太い木綿糸で平たく編んだ「真田紐」に形が似ていることから、こう呼ばれている。長いものになると、人間のお腹の中で数メートルにまで成長する。
ところで、人間のお腹に長い間棲みついているのに、どうしてサナダムシは消化されないのだろうか?
人間の胃は、食べたものを消化する働きをしているのだし、肉や魚の骨だって、小さいものなら消化できるのだから、あんなふにゃふにゃしたサナダムシなど、すぐに溶かしてしまいそうなものだ。
だが、サナダムシとて、みすみす消化されるために人間に寄生するはずがない。ちゃんと、人間の体内で生き延びるためのシステムが整っているのだ。
サナダムシは、卵のときに、食べ物を介して人間の口から入り込み、胃を通過して腸で孵化し、成長する。体内のあちこちに移行して回ることはあるが、基本的には腸が棲みかである。この、棲みつくところが胃ではなく、腸であることがポイントなのだ。
人間の消化器官は、唾液や胃液をはじめ、さまざまな消化液を出して食べ物を消化しているが、腸の消化力は、胃ほど強力ではない。せいぜいが、胃で分解した栄養分をさらに消化・分解する程度であり、生きているサナダムシを消化するほどの力はないのだ。このため、サナダムシも消化されずに、寄生し続けることができるのである。
また、サナダムシは、卵のときに胃を通過するが、卵の表面は、酸に強い特殊なタンパク質で覆われている。そのため、塩酸を主成分とする強烈な胃酸でも溶けることなく、そのまま胃を通過して腸に達することができるのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670389 |