カップヌードル
【東京雑学研究会編】
§カップヌードルに隠されている企業秘密
日本で生まれたカップ麺は、いまや世界中で年間八五億食が消費されているワールドワイドな食べ物となっている。
そのオリジナルが日清食品の「カップヌードル」だ。発案者の安藤百福氏は、一九五八(昭和三三)年に油で揚げることで麺のインスタント化に成功し、まず「チキンラーメン」を開発した。その「チキンラーメン」をもとに、麺を入れる器がそのまま調理器、食器にもなって三役をこなすカップ麺を作った。
チキンラーメンを出して成功した安藤氏は、アメリカにも進出しようとした。そのとき、どんぶりや箸を使わない現地のバイヤーたちが、チキンラーメンを割ってカップに入れてお湯を注いでフォークで食べているのを見た。これがカップヌードルのヒントになったという。
この画期的な食品のカップには、麺とスープと具だけではなく、多くのユニークなアイディアが詰まっている。
最初のアイディアは、アメリカ視察からの帰路の飛行機の中で思いついた。マカデミア・ナッツ入りの容器がアルミコーティングされた紙で封印されているのを見て、麺を入れた容器にふたをつける方法が考え出されたのだ。
麺全体を入れる容器には、当時まだなじみのなかった発泡スチロールが採用された。衛生面ですぐれている上、保温性が高いのに持っても熱くない。
中身の麺は、宙吊り状態になっていて上下に空間がある。そのため麺の下に落ちてきた熱湯は、麺を下からも包み込んで全体をほぐすことになる。
また、下に空間があると麺が底にぶつからないから麺折れなどの破損を防ぎ、カップの強度も強める。
麺や具の中身をどうやってカップに収めるかが、最後の難問だった。しかしこれも中身を下に置いて、その上から容器をかぶせることで可能になった。
麺は下の方がまばらで、上にいくほど密度が高い。これは麺の湯戻りを速めるのに役立つ。このことは麺を一食分ずつ上からふたをして油で揚げることで実現し、この製法は後に特許になった。麺の太さも、三分という限られた時間でおいしさを十分に引き出せるように、計算しつくされている。
小さなカップの中には、これだけの秘密が隠されているのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670199 |