戒名
【東京雑学研究会編】
§死者に戒名をつけるのはなぜか?
人が死ぬと、その人の名前とは別に、○○○居士、○○○大姉といった戒名をつけて、葬式をあげることが多い。これは、仏教の習慣である。
そもそも、戒名とは死者の名前ではなく、僧侶としての名前である。仏教では、俗人が修行を積んで悟りを開くと、僧侶となることができる。このとき、受戒という儀式が行われ、戒名が与えられる。
僧侶ではない俗人も、死んだときに戒名を与えられるのは、僧侶としての名前を臨時につけて、来世へ送り出すためである。極楽にいくようにとの願いをこめて、戒名をつけるのである。
もっとも、戒名はタダではない。宗派や寺、その家の格式によって違うし、戒名料というものが明確に決まっているわけではないが、つけてもらった戒名の序列によって、値段は大きく異なっている。
あくまで一般的な基準ではあるが、最も序列の高い○○院殿居士、女性なら、○○院殿大姉だと、百万円以上といわれる。これは、昔ならば天皇や皇后、大名などにしか与えられなかった戒名で、高位の僧侶が、一生に一人か二人にしか、授けなかったほどである。
これに次ぐ戒名が、かつては上級武士とその妻に与えられた○○院居士、○○院大姉で、五〇万円。その次の○○居士、○○大姉だと三〇万円。庶民の戒名である○○信士、○○信女だと、二〇万円ほどだという。
この料金を、葬式であげてもらうお経の料金に加算して、寺に納めることになる。
ちなみに、子どもには「○○童子、○○童女」、赤ん坊には「孩児、孩女」という戒名が与えられる。また、隠居した者が、世を捨てて戒名をつけてもらい、僧侶のような質素な生活をすることもある。
キリスト教には、戒名にあたるものはないし、神道では、死者は神になると考えられているので、俗名の下に「命」をつけて呼ぶ。「日本武尊命(ヤマトタケルノミコト)」のミコトも同様である。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670184 |