オレンジペコー
【東京雑学研究会編】
§オレンジペコーってオレンジの味なの?
コーヒーには、コロンビアとかブラジルとかグアテマラなどと、産地の名前のついた種類がたくさんあって、味も酸味や苦みにそれぞれ特徴があるため、好みのブランドを持つ人は多い。
紅茶も産地別に特徴はあるものの、それよりブレンドによりさまざまな味を生み出してメーカーごとの特色を出したもののほうがポピュラーだ。さらにアップルティーやアールグレイなど、フレーバーで風味を出す工夫も重ねられてきた。最近ではキャラメル風味といったものまで登場している。
そんな紅茶の種類の一つにオレンジペコーがあるが、アップルティーやローズティーがアップルやローズの風味を持つのとは違って、オレンジの風味という意味ではない。茶葉のグレードからきた呼び名だ。
オレンジとは果実のことではなく、いれたときの茶の色、あるいは茶摘みのときの茶葉の芽の色がオレンジだったことからきたものである。ペコーとは中国語の「白毫」のなまったもので、茶葉の芽の芯に白い産毛のようなものがあることから名づけられた。
この産毛の生えた芽の混じった紅茶は、若々しい新芽だけに紅茶の味をまろやかにし、風味も豊かだと中国から輸入された当初、ヨーロッパで人気となった。当時、製茶技術が未発達だったため、この新芽で作る茶葉は七~一二ミリほどもあったが、技術の進歩につれ、茶葉がより細かく小さくよれるようになっていく。
また、茶摘みの時期によって茶葉の生長が異なるため、でき上がるリーフティーのサイズもさまざまになっていく。そんな中で商品としての紅茶の品質を表すグレードがきめられていったのだが、オレンジペコーは白い産毛のある芽を含むものというより、輸入され始めた当初の茶葉のサイズと同じ一センチ前後のものを呼ぶようになる。
ただ、このグレードとは別に、「オレンジペコー」を商品名として、澄んだ橙色の紅茶がいれられるリーフをあるメーカーが売り出した。紅茶の生産の歴史と、紅茶産業の発達に伴うグレード誕生の過程と、商品化のイメージ作戦の三つが混乱しているのが今のオレンジペコー。けっしてオレンジ風味でないことだけは知っておきたい。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670149 |