御茶ノ水
【東京雑学研究会編】
§「お茶の水」はなぜ「御茶ノ水」と呼ばれるようになったのか?
「お茶の水」は、神田駿河台から湯島にかけての地名である。これは行政名ではなく、御茶ノ水駅周辺を表す通称である。ここには、JR中央線、地下鉄丸ノ内線が通っている。駅は一九六二(昭和三七)年にできたが、そのときから「御茶ノ水」という表記は変わらない。ちなみに、なぜ駅名だけに御をあてるのか、その表記については不明である。
さて「お茶の水」という名前の由来であるが、これは江戸の初期に名付けられたものらしい。当時、この界隈には高林寺という禅寺があった。現在の本郷元町公園の辺りである。
そこの庭にあった井戸からとても美味な水がわき出ており、ときの将軍徳川秀忠に献上されたのである。そして、秀忠がその水でいれた茶をとてもおいしいと褒めたことから水が出る一帯を「お茶の水」と呼ぶようになったのである。
調べてみれば、まさに言葉そのものの由来であった。
高林寺は、その後駒込に移動したということだが、井戸はそのまま残されていた。しかし、一六六一(寛文一)年、神田川の拡張工事によって、残念ながら川底に沈んでしまった。さらなる船運をよくしようと、幕府の命を受けた伊達綱宗によって行われた工事で、消えてしまったのである。
由来となった井戸はもうないが、親しみやすい名前は住民に愛され、今も使いつづけられているのだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670132 |