エコー
【東京雑学研究会編】
§風呂場では歌が上手に聞こえるのはなぜか?
疲れた身体を癒そうと風呂に入って、湯船の中で思わず好きな歌を口ずさむ。至福のときだ。自他ともに認める音痴の人でも、風呂場ではエコーがかかって、なんとなく上手に聞こえるのだから、いよいよ気分がよくなる。誰でも知っているうれしい経験だ。
自分の歌に聞きほれさせてくれるこのエコー。風呂場の構造そのものが音を響かせ、震わせているというのだが、風呂場のどこに、エコー装置が備わっているのだろう。
風呂場には大小いろいろあるにしても、一般には狭い空間である。ドアも窓もピッタリ閉まる。しかも、水漏れのないように壁も床も建材が敷きつめられ、音が吸収されにくいのである。これがエコーを生み出すのだ。
では、エコーとはどういうものか? 人が声を発すると空気が振動し、それが聞こえてくる。直接耳に届く振動もあれば、壁や床、天井に反射してから耳に届く振動もある。この反射音が、残響を大きくしている。
残響とは、音源が音を出さなくなってもつづいている空気の振動のことで、もちろんこれも耳に聞こえるのである。
もし、まわりに布製のカーテンがかかっていたり、畳が敷かれた部屋であるならば、音を吸収しやすいので、残響はすぐに消えてしまう。しかし、風呂場では、あちこちに音が反射して、残響が長い間続くのである。しかも、音の強さも増加する。
風呂場はカラオケの音響構造と基本的に同じものをそなえているのである。いわば、「天然の残響付加装置」といえる。
今や海外にまで広まり、多くの人々を楽しませているカラオケ。これは、日本の文化だという人までいる。そのカラオケルームとまではいかないにしても、風呂場は手軽に一人で、しかも十分に自分の歌に酔うことができる小部屋なのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670100 |