浦島太郎
【東京雑学研究会編】
§「浦島太郎」のカメはオスかメスか?
おとぎ話も深読みすれば、さまざまなことがわかるものである。「浦島太郎」もしっかりと読めば、助けたカメがメスだったことがわかる。さて、どうしてそうなるのであろうか。
「浦島太郎」のお話の中で、カメは浜で助けられたことになっている。ウミガメは、生まれて海に入ったら、ほとんどが一生海の中で暮らす。唯一例外が、メスの産卵のときである。名古屋港水族館によると、近年はオスが陸にあがるという報告もあるそうだ。これは北西ハワイ諸島のリジアンスキー島でのことだが、でもそれも非常に珍しいケースなのだという。
おそらく、「浦島太郎」が助けたカメは、多分、産卵のために浜にあがっていたのだろう。だから、メスということになるのである。
ウミガメのメスといえば、産卵のときに泣く姿が有名である。丸い目から流す涙を写真や映像で見た人は多いのではないだろうか。
でも、これは実はウミガメの生理現象なのである。海中に生活するウミガメは、体内の水分が減らないように、海水を飲んでいる。魚はそうしてとりこんだ海水のうち、体液と同じ水分だけとりこむと、余分な塩分はエラなどから体外へ捨てるのである。
しかし、エラのないウミガメは、捨てるところがない。どこで捨てるかといえば、それは目である。目に塩分を排出するための腺細胞があるのだ。ウミガメが流している涙は、実は余分な体内の塩分を排出しているだけなのである。
ウミガメの涙に産卵の苦しみや生まれてくる子を心配する母性を重ね合わせるのは、人間側の思い入れだったわけである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670089 |