ウソの見抜き方
【東京雑学研究会編】
§人間のどこを見たらウソをついているのがわかるか?
人と向かい合って対話するときは、目を見て話せといわれる。話している最中に相手から目をそらせたり、伏せたりすると不信感を与えるが、きちんと目を見ていれば誠意をもって応対していることが伝わるし、相手の信頼感を得ることができるというようなことが、交渉術のハウツー本によく紹介されている。
たしかに、こういうふうにすればあなたの誠意は伝えられる。しかし、同様にふるまっているからといって、相手もこちらと同じ誠意で応えてくれているかどうかはわからない。もしかしたらウソをついているかもしれないのだ。そういう意味で、それこそ視線や表情はごまかしがきく。
しかし、人間はウソをつくとき、どこかにそのストレスが出る。代表的なのが手の動きだ。あごをなでる、鼻をこする、耳たぶに触れるなど、顔近くでの動きなら、視線を相手の目にあてておいても目につくから、「おや?」と気づくこともある。
特に、たいていの人は口を押さえるしぐさが増えるので、わかりやすい。これはウソを語る自分の口を、少しでも相手から隠そうとしているのだとか、ウソをつくときのほくそえみを相手に見られないようにする心理の表れだといわれている。しかし、この動作は相手を落ち着かなくさせたり、容易に不信感を抱かせたりするから、ウソつきの初心者だ。
巧妙なウソつきの場合は、相手に見えないひざの上やデスクの下に置いた手の動きが、感情を表しているはずだ。手のひらを握ったり開いたりしている。ぎゅっとかたくこぶしを作っている。指を組んだりなでたりしているといったような動きだ。
芥川龍之介の小説『手巾』では、子どもの亡くなったことを笑顔で話している婦人の手が、テーブルの下でハンカチをかたく握り締めてブルブル震えていることに主人公が気づくが、まさにこれが、本音とは裏腹な会話をしているときの、手の動きの代表なのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670081 |