一番風呂
【東京雑学研究会編】
§お年寄りが一番風呂に入ってはいけない理由
儒教の教えに「長幼の序」というものがある。年長者は若い人よりいろいろな経験を積んでいて知恵もあるから、敬って先を譲りなさい、というものだ。
けれども、お風呂に関してだけは例外。お年寄りに一番風呂をゆずるのは、あまりおすすめできないことなのだ。
たしかに一番風呂は、サラサラしていて気持がいい。けれども不純物が混じっていないということは、お湯の熱が肌を直撃してしまうということなのだ。加齢のために肌が弱っているお年寄りに、これはちょっと刺激が強い。
二番風呂以降だったら、前に入った人の垢や脂がお湯の中に溶け込んでいるから、その分、お湯の肌触りが柔らかくなり、一番風呂のようなピリピリ感がなくなるし、前に入った人がいると浴室は蒸気が立ちこめて、一番風呂に入るときのような冷んやり感もない。
特に冬場は、普通の室内と浴室との温度差が激しい。温度差が激しいところに行くということはそれだけ血圧の変動も大きくなってしまうということ。暖かい部屋から冷えた脱衣所に行って衣服を脱ぐと当然、血圧が上がる。そこにもってきて熱いお湯に入ると、また血圧は上昇し、心筋梗塞や脳出血をひき起こしかねないのだ。
お年寄りを大切にしたかったら、ちょっと不遜に思えても二番風呂以降にゆっくりつかってもらうのが孝行なのだ。ひとり暮らしで二番風呂に入ることができないお年寄りなら、お風呂に入る前にシャワーを出しておくといい。シャワーの蒸気で浴室の温度が上がるので発作の防止に効果的だ。また沸かしたばかりの一番風呂には入浴剤を入れて刺激をやわらげるのも有効だ。
長時間の入浴もお年寄りには毒。それから、高齢者に限らず、お酒に酔っての入浴は御法度だ。なんと一年のうち一番溺死者が多いのは、夏ではなく、忘年会や新年会の集中する一二月なのだ。この時期の溺死者の多くが酔っぱらって風呂に入り、浴槽で溺死しているのだから注意したい。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670050 |