イタリア人
【東京雑学研究会編】
§イタリア人で自分をイタリア人だと思っている人はいない!?
海外で「あなたは日本人ですか?」と聞かれたら、標準的な日本人なら、当然のように「はい、日本人です」と答えるだろう。同じように中国人に「中国人ですか?」と聞けば「はい、中国人です」と答えるだろうし、アメリカ人に「アメリカ人ですか?」と聞けば「はい、アメリカ人です」と答えが返ってくるだろう。
ところがイタリアに住んでいてイタリア国籍を持つ人に「あなたはイタリア人ですか?」と聞いても「はい、イタリア人です」という答えはなかなか返ってこない。「ミラノ人です」「ナポリ人です」といった答えが返ってくるのだ。
こんな答えが返ってくるのはイタリアの歴史に原因がある。
イタリアでは一八六一年にイタリア王国が誕生するまで、たくさんの独立国家に分かれていた。つまり、ローマ、ヴェネツィア、フィレンツェなどの独立国としての歴史は長くても、イタリアという統一国家の歴史はとても浅いのだ。
このイタリア王国ができるまでの過程をリソルジメント(Risorgimento、日本では「イタリア統一」と訳される)と呼ぶ。
リソルジメントは「再興」「復興」の意味で、一八~一九世紀の思想家や運動家がイタリアに再び中世のコムーネ(中世イタリア北・中部の自治都市)時代のような繁栄をもたらしたい、という願いを込めて活動を行った。リソルジメントは非常に長期にわたって、「自由」「独立」「統一」を旗印に進められた。
念願かなって一八六一年にイタリアが統一国家になった後も、人々はそれぞれの独立国家時代のアイデンティティを持ち続けているのだ。
それに加えてイタリア人はギリシア人、カルタゴ人、ガリア人、サラセン人など雑多な民族の混血で、今でも地域によって人々の顔つきや身体つきに独特の特徴を見せている。長身で金髪碧眼の北イタリア系、ずんぐりした中背で栗色の髪のアルプス系、小柄で黒い目と縮れた髪の地中海系、中背で栗色の目と髪をした中部イタリア系、という四種類の人たちに大別できるという。
こういった人種的、歴史的な事情から、イタリアに住む人たちは自分たちをイタリア人としてよりはローマ人、シチリア人というふうに自覚しているのだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670048 |