ワイン-about
イタリアではすべての州でワインが造られているが、それらをひとくくりにして個性の魅力を語るのは難しい。南北に長い国土ゆえに気候風土の違いがあるのもさることながら、歴史的にも小国分立時代が長かったために地方ごとの独自の文化が形成され、ワインにおいても地域に根ざした個性が育まれてきたからだ。各地域らしい味わいを生む大きな要素として、おびただしい種類のブドウ品種が挙げられる。ほかの国と比較してもイタリアはブドウ品種がたいへん多い。国が認証している品種が約400種。実際使われているものだけでも100種以上に及ぶ。まさに「ブドウ品種の世界最大の貯蔵庫」ともいわれる所以だろう。イタリアにはDOCGやDOCなどの格付けは存在するものの、実際には「おらが土地のワイン」の意識が勝っているため、理解のお助け程度に知っておくにこしたことはないが、このルールにこだわりすぎることはない。むしろ地域性に意識を向けて飲んだ方が楽しい。各地域で造られるワインは同地域の郷土料理にもたいへんよく合う。もし気に入ったワインをみつけたなら、生産地とブドウ品種、さらに生産者だけは記憶しておきたい。そんな出会いの積み重ねの中から、自分と相性のいいイタリアワインがみつかるはずだ。
| 東京書籍 (著:岸 朝子) 「イタリアン手帳」 JLogosID : 8541153 |