福祉カー
【ふくしかー】
座席が車椅子に早変わり、二一世紀の車は福祉カー
現在走っている車のほとんどは、健常者が乗ることを前提にしてつくられているといってもいい。だが、全国には体の不自由な人やお年寄が大勢いる。そんな人たちにも、容易に乗り降りできる車があるだろうか。
公共交通機関の乗合バスや路面電車などが低床車両を導入し、駅のホームにはエスカレーターが設置され、車椅子でも安心して道路を渡れるエレベーターつきの横断歩道橋も建設されつつある。スロープを設けたホテルやレストランなども多い。今や公共の施設や交通機関ばかりではなく、民間の企業、施設などでもバリアフリー化が図られている。それなのに、車だけが今のままでいいはずはない。わが国は、これから高齢化社会を迎えようとしているのである。
筆者の母も車椅子の生活を余儀なくされているからよくわかるのだが、大の大人を車椅子から一般の自動車の座席に移し換えるのは容易なことではない。男手がなければ、車に乗せて戸外へ連れ出すのも難しいのだ。だが、体が不自由な人もお年寄も、郊外に出かけたり買物にも行きたい。しかし、足がわりとなってくれるものがなければそれもままならない。その望みを叶えてくれるのが福祉カーである。
福祉カーは今、好調な売行きだという。福祉車両はこれまで、ごく限られた特定の施設にしかなかったが、それが一般家庭にも普及しつつあるのだ。座席が回転して、車外への出入りが容易にできる車、ボタンを押すと後部座席が外に出て、車椅子に早変わりする車。福祉車を製造している会社は、まだ全国にごくわずかしかないが、これから高齢化社会を迎え、需要はますます増大していくものとみられている。二一世紀はもっと福祉カーにも目を向ける必要があるといえよう。
| 日本実業出版社 (著:浅井 建爾) 「道と路がわかる事典」 JLogosID : 5060143 |