渋滞対策②
【じゅうたいたいさく】
渋滞対策その二―TDMの実現
交通渋滞を解消させるには、交通容量を増大させるか、交通量を減らすしかない。「TDM」は交通容量を増大させて渋滞を解消しようというものではなく、交通量を抑制することによって渋滞を減らそうというものである。まだ耳慣れない用語だが、やがては一般化するだろうと思われる。
TDMは、交通需要マネジメント(Transportation Demand Management)の頭文字を取ったもの。要するに、車の利用者が協力し合い、交通量の減少あるいは調整を図ることによって、渋滞を解消しようというものである。従って、TDMは車の利用者の協力なしくては、実現が不可能な施策だといえる。
その施策の一つとして、フレックスタイムの導入がある。出勤時間をずらすことによって、集中する交通量を分散させ、渋滞を解消させようというもので、公共民間が一体となった協力が不可欠である。フレックスタイムの導入によって大きな成果を上げている都市もあるし、フレックスタイムの導入前と比べ、渋滞が半分になったという事例もある。
次に考えられるのが、パークアンドライドシステム、すなわち公共交通機関との連携を図り、自宅から職場まで車通勤していたものを、最寄りの駅の駐車場に車を停め、そこから公共交通機関を利用する方法に転換させる。こうすることによって、都心への車の流入を減らそうというものだ。駅まで車ではなく、自転車を利用するようになれば効果は倍増する。これを促進させるには、歩車道の分離、駐輪場の整備なども必要になってこよう。
通勤する車を見てみると、ほとんどの車が一人しか乗っていない。助手席も後部座席も空席なのである。この車に二人、三人と相乗りすれば、車の利用台数を減少させることができる。協力し合って、一台の車に相乗りしている車を優先的に通行させるホブレーンの設置も考えられている。しかし、出勤時間や帰宅時間などに個人差があるため、これは大変難しい施策だといえる。
このほか、通勤経路の変更がある。幹線道路に集中しがちな交通量を、空いている道路に誘導し、渋滞を緩和させるというものだ。また、交通量に応じて道路の中央線を可変的なものにするという方法もある。たとえば、上下各二車線ずつの道路では、朝のラッシュ時は都心へ向かうレーンを三車線に、都心から郊外に向かうレーンを一車線とし、夕方のラッシュ時にはこれを逆にして、車の流れをスムーズにするというものだ。この方法を導入して効果を上げている都市もある。
このように、交通需要を抑制し調整することによって、渋滞を緩和させるのがTDMの狙いだが、道路利用者の協力なくしては、TDMの実現はありえないのである。
| 日本実業出版社 (著:浅井 建爾) 「道と路がわかる事典」 JLogosID : 5060103 |