高速道路の形状
【こうそくどうろのけいじょう】
地形のせいではない。高速道路が直線でないわけ
わが国の地形は複雑で、山があったり川があったり、住宅地があったりして、最短距離で道路を建設することが難しい。だから、高速道路にも直線区間が少ないのだろうか。実はそうではないのである。
日本の土木技術は世界最高の水準にある。そこに山が立ちはだかろうと、谷や川があろうと、一〇キロや二〇キロ程度の区間なら、直線の高速道路を建設することは、それほど困難なことではないのだ。だったら、なぜ高速道路には直線区間がほとんどないのか。
高速道路は立体交差になっているため、信号で止まることはない。人や自転車が突然飛び出してくる恐れもない。一般道路のように余計な神経を使う必要がないのだ。だから、つい気が緩みがちになる。しかも、道路の両側が防音壁であったり、土手であったり、一般道路より高いところを走っていたりする。景色の変化が乏しいために集中力を欠き、眠気をもよおした経験を持つドライバーは多いはずである。北海道の直線道路を走ったことのある人なら、直線道路がドライバーにとっていかに危険であるかがわかるだろう。果てしもなく続く平原、田園地帯、走っても走っても風景が変化しない単調さ。筆者も北海道をドライブしたとき、直線道路で距離感覚やスピード感まで喪失しかねない状態に追い込まれたことがあった。
これがもし高速道路だったら、この症状はもっとひどくなっていたはずだ。高速道路のカーブはそれを防ぐためのものだといっていい。道路を曲線にすることによって風景に変化をもたせ、集中力を持続させる。そのために、高速道路にはほとんど直線区間がない。この工法には、高速道路の先進地、ドイツを走っているアウトバーンの技術が導入されているという。
| 日本実業出版社 (著:浅井 建爾) 「道と路がわかる事典」 JLogosID : 5060037 |