避難路
【ひなんろ】
避難困難地区に住む人々の命が危ない!
日本の道路は、車が安全かつ快適に走行でき、産業の発展を目指すことに主眼を置いて整備が進められてきたといえる。そのため、末端の道路、いわゆる住宅地にある道路の整備は後回しにされてきた。確かに交通事故や交通渋滞などは都市交通の抱える悩みであり、早急に改善しなければならない社会問題でもあるが、住宅地の道路にも深刻な問題があることを忘れることはできない。
それは、道路が狭すぎるということである。新興住宅地はまだしも、古くから開けた地域に張り巡らされている道路は狭い。戦災で焼かれた地域は、都市計画で道幅が広げられているところも多いが、戦災から免れた人口密集地の道路は依然として狭く、車の通行できない地区も少なくない。また道幅が充分でないため、違法駐車の車で埋められ機能していない道路も多い。火災や事故が発生しても、消防自動車や救急車が通ることができず、被害をより大きくしたという事例は数限りなくある。そういった地区の道路も、幹線道路の整備と並行して進めていかなければならないはずである。
東京、大阪、名古屋の三大都市圏の人口密集地で、避難路まで一km以上離れている地区のことを、避難困難地区といっているが、この地区に住んでいる人が、三大都市圏には何百万人もいるという。まずこの人たちの生命を守ること、すなわち避難困難地区人口を減らすことが、今後の道路整備の大きな課題である。
避難路としては、幅員二〇m以上の道路が必要だとされている。また、広域避難所としての役割も担う都市公園を、市街地の中に整備する必要もある。このように、道路は交通のためだけではなく、災害時には避難路としても機能するものでなければならないのである。
| 日本実業出版社 (著:浅井 建爾) 「道と路がわかる事典」 JLogosID : 5060014 |