偉大な芸術作品や偉大な芸術家にとっては官能と精神との間にいかなる距たりもなくありえず、またあって
【名言名句】
偉大な芸術作品や
偉大な芸術家にとっては官能と精神との間にいかなる距たりもなくありえず、またあってはならない
【解説】
「官能」は「感性」と読み替えてもよい。「精神」がつかさどる思想性や内面性、また、表現形式などの技術的側面は、音楽にとって欠くことのできないものである。しかし、「精神」を偏重することによる弊害もまた大きいのである。繊細で豊かな「感性」が正当に評価されなければならない。
この言葉が書かれた「すべて偉大なものは単純である」という評論の中で、彼は「芸術家にとっては官能を伴わない精神は希求するに値しない、と同様に、精神のない官能もいただきかねるものです」ともいっている。
【作者】ウィルヘルム・フルトヴェングラー
【生没年】1886~1954
【職業】ドイツの指揮者
【出典】『音と言葉』
【参考】フルトヴェングラーが活躍した二十世紀中葉の時代は、自然科学が大いに発展し、認識や評価の際にも科学的な手法が尊重される時代であった。音楽の分野でも、音楽そのものの感覚的、情緒的な効果は軽んじられ、その楽曲自体の時代背景や理論的な分析が重視された。このような風潮にあって、たとえば耽美的な側面が強い十九世紀ロマン派の音楽などは不当に低い地位におとしめられることとなったのである。この言葉は、そのような風潮に対する毅然たる反論である。
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450640 |