実に敵という敵の中で山の神ほど恐しい敵はない
【名言名句】
実に敵という敵の
中で山の神ほど恐しい敵はない
【解説】
男は一歩外に出れば七人の敵をもつというが、そうしたあらゆる敵よりも、もっと恐ろしいのは家で待つ妻だ、というのである。
男にとって妻はだれよりも信頼できる味方である反面、だれよりも自分の弱点を知っている敵でもある。油断は禁物だ。妻を侮るなかれ。しかしこれらの言葉のうちには妻へのある種の愛情、尊敬の念が流れているようでもある。
【作者】森 鴎外
【生没年】1862~1922
【職業】作家
【参考】鴎外は、長男|於菟をもうけた最初の妻とは長男誕生後すぐに離婚し、四十一歳で再婚している。再婚後の生活を題材にした『半日』では妻に対して「博士はこらえている。何か云えば、向こうの肝癪が募るばかりである。」のような表現が出てくる。再婚後に生まれた長女|茉莉は、その著作『父の死と母、その周囲』の中で「若い間、父を独占しようとして闘って暮らしたほど情熱家だった母は、いつも静かで、誰にでも優しい父を困らせることもあった。父もそんな母には困ってゐたが、父の健康が急激に弱って、結婚してからはじめて母の方からも父を劬はるやうな状態になった時、父の心には直情な母に対する信頼だけが残り、母の心には不平や苛々する心が消えて、哀しい思慕だけが、固まったので、あった。」と記している。
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450402 |