(男は)わづかにあふぎ見るやうなる中に何となくなつかしきけしきをふくみたらんぞよき
【名言名句】
(男は)わづかに
あふぎ見るやうなる中に何となくなつかしきけしきをふくみたらんぞよき
【解説】
二十三歳になる年の一葉の理想の男性像。このころ、一葉のもとには同人誌『文学界』の青年文士が多く出入りしていた。そうした青年たちを一葉は冷静に観察していて、次のような男性観をつづっている。
「わざとらしくとりすましたような男もいやだけれど、万事心得顔でなれなれしいのは、才能教養があったとしてもなんとなく軽く見られるものだ」。
そして、「高山のように、気高くて少しこわいようなところがあって」に続くのが右の言葉である。「そっと仰ぎ見るような人でありながら、なんとなく親しみの感じられるところのある人がよい」という。これが一葉の理想の男性像だろう。
威厳と親近感を兼ね備えたそのイメージは、彼女が小説の指南を受け、思慕を寄せていたといわれる半井桃水をほうふつとさせるものがある。
【作者】樋口一葉
【生没年】1872~96
【職業】作家
【出典】『塵中日記』
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450276 |