自尊心のない男ほど厭なものはない
【名言名句】
自尊心のない男ほ
ど厭なものはない
【解説】
放浪の果てに職業を転々と変えた林芙美子は、さまざまなタイプの男に接したことであろう。
しかし、自分の生きてきた道を考えるたびに、自らについての誇りを失いたくはなかったにちがいない。
林芙美子は自尊心の強い女性だった。それだけに自尊心のない男に我慢ならなかった。
自尊心といっても、自儘で利己的であるわけではない。自分の欲しないことは他人にもされたくない、という心である。
自分を大切にしない人間は他人も大切にしない。そんな無神経な男を心から嫌ったのである。自尊は他敬に通じる。
【作者】林 芙美子
【生没年】1903~51
【職業】作家
【出典】『晩菊』
【参考】『晩菊』は昭和二三(一九四八)年の作品。悲惨な戦争と敗戦を経て、まだその傷跡がなまなましかった時期である。これは、主人公の「きん」が、その昔は情熱的に自分を愛した年下の男がいまは金の無心にきたのをみて心につぶやく言葉である。男は殺意を抱くが、きんは冷静にそれを感じ取る観察眼をもっていた。
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450275 |