ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月の頃
【名言名句】
ねがはくは花のし
たにて春死なんそのきさらぎの望月の頃
【解説】
満月の光の中に白く浮かび上がる満開の桜。その下ではらはらと散る花びらに埋もれながら死を迎えたい。
二十三で出家したとはいえ、この歌は僧のものとは思えない。後鳥羽院に「不可説の(言葉ではいいようのない)上手なり」と評価された『古今和歌集』を代表する歌人、西行ならではの優美でかつ深遠な歌である。桜を愛する日本人ならではの感性ともいえる。しかも西行はこの歌のとおり、陰暦二月十六日に亡くなったという。まさに自分の美学を貫いた人生だったのだ。
【作者】西行
【生没年】1118~90
【職業】歌人
【出典】『山家集』
【参考】西行はこよなく桜を愛した。一説に、鳥羽上皇の中宮であった待賢門院璋子にひそかに恋し、二十三歳という若さでの出家もその苦悩ゆえであったといわれる。そうだったとすれば、西行にとっては桜は待賢門院の化身であったのだろう。ちなみに、西行は平清盛と同年の生まれ。平安末期から保元・平治の乱を経て鎌倉幕府成立へと移り変わる激動の時代を生きた。
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450158 |